[コメント] シークレット・サンシャイン(2007/韓国)
この作品で特筆すべき点を1つだけに絞るのならば、それがチョン・ドヨンの演技であることはほぼ一致するところだろう。もちろん名女優として知られる彼女だが、イ・チャンドンの脚本と、監督との役作りなしにこの演技は生まれなかった。
ソン・ガンホも良い役所ではあるのだが、その他のキャストが、映画系の俳優にまったく重きを置かない見事な配役だった所を考えると若干作りすぎの感が漂うのだが、そのバランスあってこそのこの作品と言えるかも知れない。
西欧の記者や当の韓国でも反キリストかとも問われたという。反応としては予想に難くない一方で、監督自身はその意図はないという。しかし、宗教による救済の限界を正面から描いているのは間違いなく、反キリストの意図がなくとも、キリスト教徒に与える衝撃は間違いなくあるのだろう。
キリスト教を「嘘」だと糾弾する歌の使い方も韓国らしい、彼の地のかつてのヒットソングをあのように使われてはたまらない。サウンドトラックも素晴らしい。
原題は、映画の舞台である地名「密陽(ミリャン(密陽)」その文字をそのまま訳した「シークレット・サンシャイン」。いや密の字は密度といった意味もあろう。しかしそこにあえてSecret Sunshineという英題をオープニングスーパーに当てているのだからその意味も映画に込められていると見てよかろう。日差し。そこに神がいてもいなくとも、日差し。その映像として切り取られた日差しのさりげない美しさと人間の存在。
人間を描くことへの挑戦。決して型にはまることのない新しい映画を作り続ける韓国映画界の貴重な存在、イ・チャンドンは今後も注目し続けなければなるまい。
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