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[コメント] しゃべれども しゃべれども(2007/日)

「二つ目」映画
グラント・リー・バッファロー

古典落語は内容と落ちがあらかじめ決まっていて誰がやっても同じ話になるはずだが、噺家の個性が加わることで個々の味わいが浮かび、別の話のように感じさせる。最近二つ目の落語を見る機会が多いのだが、「若手」(といっても三十代が多いが)の彼らは上手下手の差が人によって大きい。下手な二つ目の落語は通り一遍の筋を早口で話しただけで、その演目が定型的な筋書のある話であることを意識せざるをえなくなり、窮屈極まりない。

映画にも原作や脚本が存在するが、監督の演出に沿って役者が演じることで、ストーリーが流れていく。しかし、国分太一のぶっきらぼうな物言いが妙に唐突だったり、強面なはずの松重豊が場面によっては迫力不足でキャラが定まらなかったりと、登場人物をその場その場の設定に強引にはめこむために一貫性が失われ、脚本の存在を感じさせてしまう。下手な二つ目の落語を聞かされるのと同じ感想を抱かせるのは、監督の演出下手のせいに感じた。

ただし、そういったあたりを除けば、都電沿線付近のしっとりとした雰囲気とあいまって三十路男の青春物として好意的に受け取れた。芸にしろ生活にしろこれから固まっていく不安定な時期にある人たちの話という意味でも、「二つ目」を描いた作品だった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)おーい粗茶[*] さいもん[*]

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