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[コメント] マトリックス(1999/米)

無粋とは思いながらも、何ヶ所かつっこみたくなる衝動を抑えきれない。(レビューは作品後半部分の展開に言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







船に乗って戦う彼らは、連合赤軍やオウム真理教(アメリカなら人民寺院とかブランチ・デビディアン?)あたりに近い存在なのだろうなと思って観ていた。そのわりにはたいした理念も示されないのに、なぜ主人公は彼らと行動をともにすることを一瞬たりとも疑わないのか(自分が救世主であるかどうかを疑うことはあっても)よくわからなかった。モーフィアス君の人を試すような誘導尋問のうまさだけが印象に残る。そのなかで、あの裏切り者だけが彼らの理念を浮き彫りにする可能性をもっていた唯一の存在ではなかったか。彼がカムアウトして主人公たちと対峙したとき、『ブレードランナー』ばりの価値観の対決が観られるかと期待は高まったが、あっさり殺され「死人に口なし」になってしまった、このあたりは不誠実。こういう管理社会へのレジスタンスというテーマだったら、『未来世紀ブラジル』の描き方のほうがおもしろい。

そのあたりの基本前提がハテナだらけなので、いくら技術の粋を集められてもしらじらしく感じる。新感覚を標榜しながら、アクション・シーンを盛り上げるための音楽があいかわらずな煽りオーケストレーションでは激しく萎える。

こういうのは逆におバカでいいのかもしれないが、覚醒したら無敵という設定は、クイズ番組で最後の問題の点数だけで勝ちが決まってしまったり、ファミコンゲームの「キン肉マン」でそれまでの戦いに関係なくリング外からの光るボールをとっただけでほぼ勝ちが決まってしまうのと(わかりにくい例えですみません)同じで、もうその前の設定がどーでもよくなってきてしまい、たいへんもったいない。

ハリウッドで初めてワイヤーアクションを本格的に導入したとか、日本のマンガやアニメに多くの影響を受けているとか、その時代の携帯やネット接続の歴史性が刻み込まれているとか、モーフィアス役のローレンス・フィッシュバーンが『地獄の黙示録』であの少年兵を演じていたとか、サイドの話のほうが興味深くて肝心の本編は残念ながらあまり楽しめなかった。

(評価:★2)

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