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[コメント] 紙の月(2014/日)

点数5は少し甘いな。と思いますが、どんな局面に追い込まれても、泣き言一つ言わない梨花のハートの強さにやられました。
ギスジ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







最初の横領のきっかけは、不倫相手の学費の為だったのに、自分もブランド物や、贅沢品を買って金を使う喜びを覚え、ホテルでのとてつもない豪遊シーンや(僕も人生で1回くらいはやってみたい…)、会話に出ていたBMW5シリーズを本当に買ったりと、あっという間にお金におぼれていく様が、リアルでゾクゾクしました。金の出所が老人のお金というのもゲスい感じでイイです。虫も殺さないような顔して、「取れる所からもぎ取ります!」と言わんばかりにガンガン騙し取るんですが、ただその手口も「いずれはバレる」という空気感が出ていて、観ていて不穏な感じになるんです。梨花がはカードで支払う時に、途方もない金額を見て我に返る姿が大変痛々しかった!その横で調子に乗っていく大学生もこれまた痛々しかった泣。途中アホな大学生と分かり、別れる決心をしても、もう後戻りなんか出来ない。それでも横領しまくる梨花の行動に、なんだか胸を打たれます。僕なら罪の重さで壊れそうなのに「この女は凄い!」みたいな感じで観ていました。

梨花が不倫し横領しまくる背景に、これといった理由がないような気がします。大学生と出会う前の夫婦関係は、結構仲良く見えるんですよ。オープニングでたぶん旦那と一緒に通勤してたし、生活レベルも全然悪くなさそうだし、旦那も普通に見たらイイ旦那さんに見えます。まぁたしかに時計の件はあるんだけど、物の価値観なんて男女感には結構ズレがあったりして、そんなたいした問題じゃないと思うんです。よくある事件や重大なきっかけも無く、ただなんとなく大学生と不倫しちゃって、気が付いたら横領しちゃった流れがとても好きです。「あの時の旦那の一言が傷ついて、私…」みたいな映画的な展開も無いので、後々彼女が言い訳が出来ない展開は、かなりストイックで引き締まる展開だと思います。

あと梨花は絶対泣き言なんか言わないんですよ。僕が好きなシーンで、偽造の書類を家で作っている時、旦那さんから電話があって、凄い迷惑そうな感じで会話をするんですが、途中プリンターが詰まって「チッ…」みたいな舌打ち?をしたりして、旦那さんは「なんかあったの?」と聞いてくるんですが、全然旦那さんの事なんかこれっぽちも頭に入ってない感じが笑えます。旦那側から観ると胸が痛いシーンですが、あのときの状況って、梨花が極地に追い込まれているシーンなんで、僕がもし彼女だったら、自分がやっている事の大きさに我に返り、泣きつくかもしれないシーンですが、梨花は絶対泣き言なんか言わないし、また絶対泣かないんですよ。あの精神力の強さは半端じゃない。元々顔に出ないタイプなんでしょう。怒っているのか、悲しいのかよく分からない表情が堪らない。それは宮沢りえの演技力につきると思います。ただ絶対自分がやった行動に対して後悔なんかしないし、絶対あきらめない精神はどこからくるんでしょうか。そんなあきらめない彼女ならラストシーンで、2階から飛び降りて脱走しますよ。なんなら、もし銀行にショットガンがあったら、梨花はそのショットガンを奪って何人か撃ったんじゃないか?と想像すらしちゃいます。それもこれも宮沢りえの演技が凄まじかったと思います。あと個人的になんですが、学生時代の回想シーンでも、堂々と「お父さんの財布から取りました!」みたいな事言っているし、子供の頃から信念をまげない子なんだなと思うんですが、正直回想シーンは嫌いです。みんなで歌を合唱している演出とか、子役の演技も含めて安っぽいドラマを観ている感じで好きじゃない。なもんで僕的に回想シーンは無い事にしています。あと、ラストシーンもかな、地元警察が出てきて梨花が消えるシーンは、ボーンシリーズみたいな感じで笑ってしまうんです。

(評価:★5)

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