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[コメント] 花よりもなほ(2005/日)

是枝裕和も一度時代劇を撮ってみたかったのだろう。新鮮味に欠けたのが一番残念だったが、長屋のセットなどで細かな丁寧さを見せ、ゆるい雰囲気の中、暖かい物語を紡いだ佳作ではある。(2006.06.03.)
Keita

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 原案・脚本・監督是枝裕和とあるが、僕は是枝監督が原案まで担当しているのには驚いた。映画を鑑賞中、これはきっと松竹の持ち込み企画なのではないかとすら感じたからだ。是枝監督が撮ったからといって、そこまで時代劇に新風を吹き込んだわけではなく、かといって全然悪い映画でもなく…。日本の映画監督というもの、やはり一度は時代劇を撮ってみたいものなのだろう。

 しかし、非常に暖かく良い話ではある。仇討ちだけが人生ではないという、武士にあらずべきゆる〜いテンションが、アンチヒーロー映画とでもいうべきか、良い雰囲気を出している。しかも、仇討ちを狙ってるくせに、徹底的に弱いという間抜けさが面白い。最終的には、仇討ちをすべてお芝居として信じ込ませよう、という実にずる賢いアイデアが出るが、これはとてもユニークだし、それによって仇を討つ側、討たれる側、ともに幸せに生きられるというのなら、その方がいいではないか!と感じさせられる。ラストシーンの寺子屋を探す子供の姿と、岡田准一の笑顔はとても暖かかった。

 『誰も知らない』のスタッフによる映画作りもやはり丁寧だ。長屋のセットはすごくよく出来ていたと思うし、映像にしてもきちんと撮られているなという印象が強い。時代劇というまったく未知のジャンルに挑戦した是枝監督だが、本人も「これは娯楽映画」と宣言しているゆえ、手堅い映画は作れているので、その力量はやはり評価すべき。本当は時代劇でも『誰も知らない』級の傑作を作ってほしいところだが、それは求めすぎなのかもしれない。

(評価:★3)

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