昔、冗談で「絶対見たくないコミック映画化二本立て」というので、武田鉄矢主演『妖怪ハンター』×五輪真弓主演『ヤマタイカ』などと考えて友人同士笑い合っていたものだが、阿部寛の稗田は、武田はもちろん『妖怪ハンター・ヒルコ』の沢田研二なんかよりもずっと似合っていたのは確かだろう。

今回、彼をさしおいて主演をつとめた藤澤恵麻は、そこそこ物語の邪魔にはならずに水先案内人を演じはしたのだが、彼女のもとに戻った神隠しの少年が、一緒に遊べなくなった彼女に別れを告げて「ぱらいそ」に向かう人々に同行してしまう「甘ったるい」感情の発露はいただけなかった。ことは、知恵の実の代わりに命の実を食った「じゅすへる」の末裔である人類すべての救済の問題である。それをあんなカタチで俗化してしまうのは勘弁して欲しかった。原作『生命の木』を「知的射精体験」と評した人物があったが、どうもこの映画版は、『ヒルコ』などとは比較にならぬくらい真面目に創っているのは確かなのだが、どうにも無駄が多く、昇天シーンを感動まで持ってゆく境地には到底及ばないと感じられた。

最後に、白木みのるの「三じゅあん」には特別賞を贈りたい！…しかし「ぜんず」の声の吹き替えが三ツ矢雄二ってのは何なんだか…。