[コメント] サイコ(1960/米)
ヒッチコック一流の手練手管をあらゆる面から堪能できる。これだけ分かりやすくテクニックが駆使されていながら、それでも存分に楽しめる、というところが素晴らしい。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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主人公が映画の中盤で姿を消すという構成の特異さについては世に広く云われているが、同時にサスペンスの焦点が転換することにも注目したい。即ち、前半はジャネット・リーが盗んだ大金の存在がサスペンス創出のキーファクターになっているのに対して、後半はその肝心の大金の存在がリー自身とともに完全に作劇の本筋から除外される(アンソニー・パーキンスがリーの遺体を始末する件りでは新聞紙に包まれた札束に焦点を置いたカット構成も採られるのだが)。その作劇転換をシームレスにやってのける大胆さが堪らない。
個別場面の演出で云えば、リーが車で逃避行を始める場面で勤め先の上司が車の前を横切り目が合う件り、或いは、中古車販売店を遠巻きに監視するグラサン警官の件りなど、結局作劇上は何の働きもしない人物の所作で不安感を煽る手管。また、モーテルの客間でのリーとパーキンスの会話場面では、二人のアップカットを切り返していく過程で、徐々にアングルを変えていくことで心理状態の不安定さを高揚させる。
そして、この映画の影の主役は、モーテルとパーキンスの居宅との空間設計にあると言えよう。モーテルと居宅との位置関係と距離感、そして居宅が少し土手を登ったようなロケーションにあるというところが絶妙。クライマックスにおいてヴェラ・マイルズがその勾配を登っていく姿を捉えるカメラがダイナミズムを生む。
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