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[コメント] 真珠湾攻撃(1943/米)

椰子の林の中を仰角のトラベリング移動で見せるカットは紛れもなくグレッグ・トーランドの刻印。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 1943年に製作された真珠湾攻撃のドキュメンタリーだが、公開当時カットされたというプロローグとエピローグのフィクション部分を付け加えたバージョンを私は見た。フィクション部分を付け加えることによって映画全体の均衡が崩れてしまっているが、フォードは、よりニュートラルな立場でこの映画を製作した事がよく理解できる。中間のドキュメンタリー部分だけだと、完全に反日感情を煽る内容だろう。(とは云っても全体の基調は戦意高揚であることに違いないが)

 プロローグはウォルター・ヒューストンハリー・ダヴェンポートが1941年12月6日 つまりアメリカ時間での真珠湾攻撃前日に、戦争開始の可能性に関して語り合う場面。ここでは、ダヴェンポートがハワイ州在住の日系人によるスパイ活動をしきりに忠告するのに対して、ヒューストンは日系人もまたアメリカ市民であることを強調し、反日感情を煽動しない配慮を示す。

 エピローグはアーリントン墓地を舞台に、真珠湾で戦死した水兵の幽霊(ダナ・アンドリュースが演じている!)と独立戦争で戦死した兵士の幽霊が歩きながら語り合う場面。ダナ・アンドリュースが「この戦争の勝利こそ民主主義の勝利であり、この墓地に埋葬される人もいなくなるだろう」等と云うのに対して、独立戦争の亡霊は「いや、次の戦争でも、その次の戦争でも死者は増え続けるだろう」というような主旨の科白を吐く。映画の帰結としては、ダナ・アンドリュースの論調が印象づけられるよう、つまり米国民に対して参戦肯定を洗脳するよう出来ているのだが、「次の戦争でも、その次の戦争でも」等という科白にはドキリとする。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Myrath 3819695[*]

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