コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ゴールデンスランバー(2010/日)

原作既読で見た。映像で提示されてみると、スケールの小ささ、例えばモブシーンの物足りなさがかなり目立つ。裏通りを歩く若者たちの違和感だとかもだ。このような物量含めたスケール感の問題がいかんともし難い。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 或いは巻き込まれ型サスペンスとしてもっとタイトな描き方が望まれるだろう。こういう部分ではやっぱり幻滅する。だが、全体に意図的な原作の改変部分について云えば、殆ど成功していると云っていいんじゃないだろうか。いちいち感心しながら見た。以下 普段は余りしませんが、今回は原作との相違点を中心に感想を書いてみたいと思います。(なので以下は原作含めてネタバレ注意です。)

 まず、原作で前提にしていた中途半端なSF(近未来)的な仕掛け−街中に置かれたセキュリティポッドという監視装置や首相公選制のアイデアを採用せず、リアル社会の話としたことで本作は断然シンプルな構成となった。この変更だけで枝葉のプロットがかなり削ぎ落とされている。だがそれ以上に映画ならではと思えるのは、何と云っても打ち上げ花火にまつわる変更部分だ。まず、クライマックスで上がる花火は、原作では先のセキュリティポッドの死角から打ち上げられたのだが、映画では仙台中のマンホールの蓋を吹っ飛ばしながら上がる。これは実に映画的だ。さらに、学生時代のバイト先「轟煙火」の打ち上げ花火の場面をフラッシュバックし、青柳(堺雅人)と樋口(竹内結子)のキスシーンを織り込むというのが、ちょっと甘いが決定的だ。

 そして、キャラクター造型ということで云えば、主要な登場人物以上に永島敏行演じる刑事・小鳩沢の膨らませ方がちょっとたまらない。もっともっと魅力的にできたとも思うが、しかし得体の知れない怖さはよく出ている。銃の撃ち方もよくわからない納得性があり、カッコいいのだ。彼の退場の仕方はあえて記さないでおくが、小説では書けないであろう映画的な過剰な演出となっており、ヤッパリこゝが一番感心した。

 あと、宅配会社の先輩の岩崎英二郎は渋川清彦が演じており実にいい雰囲気なのだが、その妻を安藤玉恵がやっていて、原作と同じでラストしか出てこないが、カメラに向かって跳び蹴りするという見せ場があり嬉しくなる。尚、草茫々の空き地に乗り捨てられている自動車に残したメモの扱いと、青柳の父親・伊東四朗のインタビューシーンが泣けるいいシーンだが、こゝは原作においても、最も感動的な場面だ。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)3819695[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。