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[コメント] 鰯雲(1958/日)

人物関係が非常に複雑だが成瀬は上手くさばいて見せる。淡島千景小林桂樹の叔母さんに見えないところも複雑さの一因だが「当時こんな関係は普通にあったんだよ」というような肯定の仕方以上に「映画として面白いから良い」と云いたくなる。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作のタイトルバックは映画の題名の「鰯雲」だが、この夕陽で朱色に染まったタイトルバックは実は本編で肝になる夕景のシーン−それは淡島千景と木村功が泊まることになる旅館のシーン−のフラッシュ・フォワードだ。これがことさらにフラッシュ・フォワードだという思いにさせるのは、この旅館の夕景のシーンの描き方が際立って潔いからなのだ。これ見よがしに夕景を強調したりしないからだ。描かれている内容は不倫劇に他ならないが、演出は清らかで卑怯なところのない、つまり潔い、極めて成瀬らいしい演出だ。これと同じような感慨は『驟雨』で描かれる通り雨のシーンでも感じることができるし、成瀬映画では無数に想起することができるだろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)寒山拾得[*] [*] ぽんしゅう[*]

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