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[コメント] リバー・オブ・グラス(1994/米)

主要登場人物は3人。主人公のコージー、リサ・ボウマンのナレーションで、彼女の過去が紹介される。産まれた病院の絵。子供の頃の写真。10歳の時に蒸発した母親の思い出。バスタブに浸かり、胸をさらけ出すコージー。
ゑぎ

 彼女には、まだ乳児期の子を含めて3人だろうか、子供がいる。続いて、特に説明なくバーのレジ強盗を追う刑事の場面が繋がれる。浜辺の塀を乗り越えて砂浜を追うが、波打ち際で、拳銃を落としていることに気づく。この刑事は主人公コージーのお父さんなのだ。彼が拳銃を落としてしまうシチュエーションを連打して見せる演出が可笑しい。次に、ちょっとヤンチャそうな中年男、リーの場面になる。リーは、友人が道で拾ったと云う拳銃を手に入れることになる。これで3人は繋がるのだが、さらに、コージーが、気分転換のためだと思うが、赤ちゃんを置いて外出し、リーの車に轢かれかかる。それがきっかけとなり、コージーとリーは、バーで仲 良くなる。こゝから二人の不思議な逃避行が始まるのだ。

 まず、リーの友人のプールで泳ごうということになり、勝手に塀を越えて、庭に侵入する。服のまゝプールに飛び込むコージー。リーは、プールサイドで拳銃を取り出し、手にするのだが、こゝが怖い。コージーが怖がらないのが不思議で仕方がない。かなり不穏な場面なのだ。そして、突然、家主が現れ、ライトを点けるものだから、コージーは拳銃を発砲してしまう。驚いて、靴も履かずに逃げる二人。この後、リーの車(シボレー)でのロードムービー風の展開になるのだが、実は、コージーは近所のモーテルに、ほとんど籠っているだけだし、二人で空き巣に入ったのは、リーの母親の家なのだ。この家からは、女物の靴と服と、大量の古いレコードを盗んだに過ぎない。リーはずっと裸足で行動する。グロッサリーストアで、裸足のヤツには売らない、と云われる場面が面白い。あと、モーテルで、ゴキブリを退治しようとし、叩くモノを探したあげく、聖書を使うところには笑った。

 さて、上に梗概ばかりを記してしまったが、これでも分かる通り、ツイストの効いた展開を志向したオフビートの演出が連続する映画で、カッティングは既に完成の域にあると思う。特に、コージーの父親はかつてプロのドラマーだったという設定で、自宅にドラムセットがあり、彼のドラムソロがクロスカッティングで繋がれる部分なんて、めっちゃカッコいいのだ。音楽の使い方、例えば、ジャズ・スタンダード「Travlin Light」のレコードをかけて、コージーが踊るシーンなんかも、なんて豊かな時間だろう。エンディングも、まさかこうなるとは、という終わり方。矢張り、聞きしに勝る傑作だ。

#タイトルはフロリダの湿地帯の地勢の呼び名。冒頭ナレーションで説明がある。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] 袋のうさぎ

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