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[コメント] 刑事マディガン(1968/米)

アクション映画としては、終盤の銃撃戦ぐらいしか大きな見せ場はないのだが、それでも全編しっとりとしっかりとよく見せてくれる、十分に佳編と呼んでいい出来だ。まずは、何と云っても、ラッセル・メティの撮影でしょう。
ゑぎ

 屋内屋外とも光と色遣いが綺麗だが、屋内シーンのしっとりした質感がたまらない。主人公のリチャード・ウィドマークとその妻インガー・スティーヴンスとのやりとり。ワンシーンしか出てこないが、昔の女、シェリー・ノースの部屋のシーン。特に、ノースは、クラブ歌手として登場し「You Dont Know What Love Is」を唄うのだが、その後彼女の部屋でウィドマークが眠った後、複雑な表情で照明を落とす、こゝの照明変化の演出なんて鳥肌モノだ。こういうフィルムの触感を楽しまない観客には、展開の遅い刑事モノ、という評価になるのだろう。

 また、主軸のプロット−ウィドマークとハリー・ガーディノによる犯人捜査−に加えて挿入される、ヘンリー・フォンダジェームズ・ホイットモアの汚職に絡んだやりとりや、フォンダとスーザン・クラークとの不倫劇も、じっくり描かれていて見応えがある。ウィドマークとフォンダが本編中で会う(競演する)のは中盤を過ぎたパーティシーンだが、ウィドマークの、へりくだる様子が普通じゃない。それもあって、この場面の緊張感は凄い。

 クライマックスは逃亡中の犯人、スティーヴ・イーナット(役名バーニー・ベネシュ)との対決で、この銃撃シーンの演出は、まさにシーゲルらしい、タイトな、あっという間に決着がつく演出。似たような素早いカッティングは中盤にもあって、映画館でドン・ストラウドを脅すシーンの繋ぎ(手を殴るカットの挿入等)も見事です。悪役スティーヴ・イーナットは本作の後、数年で夭逝した、とのことで、長生きしていれば、さらに良い役者になったろうと思われる。

 ラストシーンで、ウィドマークを映さずに、フォンダとホイットモアの二人のやりとりで締める、という選択も懐深い。

(評価:★4)

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