コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ちょっと思い出しただけ(2021/日)

これは佳編と思う。池松壮亮伊藤沙莉の、7月26日の様子が6回(6年分)繰り返される。しかも、2021年から遡って見せられる、という趣向の映画。
ゑぎ

 現在は、それぞれの道を歩む二人だが、別れた原因、付き合い始めた頃、出会いの日などが、描かれる。こういうの、下手にやるとアザトイお話になりそうなところだが、とても上手い作劇と、主演の二人の自然な演技で、切なさが増幅されている。

 良いと思ったシーンは沢山あるが、二度ある八景島シーパラダイスのシーンがいずれも気に入った。一度目は、最もラブラブの頃の場面(ベッドに二人で寝ているところから始まる7月26日)。水族館(池松のバイト先)の休園日なのに、こっそり二人で入るのだが、大きな水槽の前で、ダンスする場面が可愛い。そして二度目は、付き合っているかどうか、はっきりしない頃の7月26日。バイト先に突然現れた伊藤が、逃げる池松を追いかけるカットの運動表現がいいのだ。面白いなぁと思いながら見た。

 あと、出会いの日の、池松の舌打ちと、それを指摘する伊藤とのやりとりも、いいなぁと思いながら見る。この後、高円寺ストリート(JRの高架下)で、二人が踊る長回しショット(尾崎世界観が地べたに座ってギターを弾き、唄っているのが後景に見えるショット)が、カットの強さでは一番かもしれません。

 さて、こういう形式の映画は、『ペパーミント・キャンディー』など他にもあると思うが、時間の切れ目を表すためのお約束カット(繰り返されるカット)が結構鬱陶しくなってくるのが通弊で、本作の、池松の部屋の壁掛けデジタル時計(7月26日だと示される)からのパンニングの繰り返しについても、だんだんと飽きて来た。しかし、最も昔(6年前)の7月26日だけは、様子が違う見せ方で驚かせる、なんてところも、良く出来ていると思う。

 尚、ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』のパロディ部分がいくつか出て来るので、先に見ておいた方が楽しめるかも知れない。でも、全然知らなくても、本作中に種明かしのような元ネタシーンの挿入があるので、充分楽しめるのではないかと思います。本作を見た後に、気が向いたらジャームッシュも見る、というのでいいのではないでしょうか。最後に、主題歌、クリープハイプの「ナイトオンザプラネット」が流れて来る瞬間はゾクゾクするカッコ良さ。ラストで満足感が高められる作りになっているのも上手い。

#備忘。猫の名前、もんじゃ。あと、河合優実(推してます)のダンスが思いのほか良かった。あと、永瀬正敏の奥さん役の神野三鈴(推してます)をもっとちゃんと撮って欲しかった。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)ジェリー[*] おーい粗茶[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。