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[コメント] 夜明けまでバス停で(2022/日)

舞台は新宿周辺。居酒屋は大久保。バス停は幡ヶ谷二丁目。その他、都庁舎の下(ふれあい通り)、新宿中央公園など。介護施設は杉並区だったが。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 まず、アバンタイトルが宜しくない。これってテレビドラマみたいな画面ではないか。作劇上も、絶対に無い方がいいと私は思う。モチーフになった(実際にあった)殺人事件が実録的に描かれると思わせるため(フックをかけるため)であることは分かるが、私は板谷由夏の職場(居酒屋)のシーンで始まった方がいいと思った。その方が、松浦祐也の得体の知れない怖さももっと出ただろう。だいたい、GPSアプリで板谷の所在が示された時点で、彼女が殺されないことは十分予想できてしまうではないか。ただし、ラストの締め方は良いと感じた。アバンタイトルの続きの展開が予想できても、その上で、ラストの板谷由夏の言動は、予想できないものだからだ。カッコいい終わり方だ。

 また、序盤から中盤まで、そう、根岸季衣(元パンク芸者)と柄本明(元爆弾犯)が登場する辺りまでは、いたって普通の画面(繰り返しになるがテレビドラマみたい)だと思いながら見た。しかし、特に柄本明登場シーンの根岸への照明、というか太陽光の扱いがとても良く、この辺りから画面の見応えもかなり増したと感じた。前半の普通さがあるから、この良さが際立つという効果もある。勿論、この二人の科白には、作り手の気持ちが入っており、観客としてもそれに感じ入ることができる、という点も大きいだろう。だからこそ、ということもあると思うが、二人のシーンの画面が良いということが、映画としては大事だと私は考える。例えば、柄本明の小屋の中での、板谷と二人のシーンも、良いアップと、目に留まる構図が連打されていて、見応えがあるのだ。

 とは云え、居酒屋のサンプルショーケースからゴミ箱への、板谷のミタメ移動ショットもだるく感じられ、大西礼芳(店長、ちーちゃん)と三浦貴大(マネージャー)の関係の描き方、大西の見せ場は、もう少し胸のすく見せ方が欲しかったと思う。ちなみに、三浦のこういうキャラ造型、上手いと思うが、なんかタイプキャスト化してきている(私の中では)。あと、板谷の手先の器用さをもっと強調しても良かったんじゃないだろうか。アクセサリー製作と柄本との工作場面の連関を、もっと意識させても良かったんじゃないか、という意味だ。ラストの科白は冗談ではなく、彼女はこの後、柄本の後継者になるのだ、ということを明確に描くべきではないか。エンドロール中の国会議事堂のショットは、ジョークではない、ということを。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ペンクロフ[*]

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