その「意味」を、あからさまに蔑ろにした映画ではないか。

人は「真実」に何を求めているのかという問いかけではなく、人は「真実」ではなく自らを欲したように救ってくれるものを求めているに過ぎないという、不信と諦念が聞こえてくるような映画だった。

もちろん、哀れな少女を殺めた真犯人はひょっとしたら、携帯に写真を撮られた廃品回収業の男かもしれないし、彼が自らの反抗をすべて息子になすりつけようとしたのかもしれない。或いは血痕の残ったシャツを着た少年こそが真犯人かもしれない。

チン・グにボコボコにされた男子高校生二人にしたって、脅しで女子高生の顔に傷をつけようとするほど凶暴ならば、殺しだってやるかもしれない。

しかし少なくとも母親が見聞きした「真実」は息子の犯行を示すものばかりであった。そしてその受け入れを拒絶し、あたかも「忘却」に救いを求めて生きるのが人間の「真実」だと言っているようでもある。

これほど人の悪い映画を圧倒的な迫力で描ききったポン・ジュノ監督の演出と力量には恐れ入るしかない。

実はこの映画、最初は、母の健気さとか強さとか愛情の深さを描いたお涙頂戴ものかと思って見向きもしなかったが、その予告編でただならぬ不気味さを感じた。

とりわけ、ウォンビンが片目を手で覆って鉄格子越しに母親を見たシーン。本編では心中未遂を思い出したシーンだ。このシーンだけでも、「この映画はただ事ではない」と感じさせるだけの力があったが、その不気味な雰囲気が全編に漂っていては、すさまじい衝撃があった。