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[コメント] ロスト・ワールド ジュラシックパーク(1997/米)

前作と比して、恐竜へのノスタルジックな憧憬が微塵も無いのは、前作への冒涜。前作の流れを継いでいる都合上致し方ない面はあるが、恐竜が最初から『ジョーズ』的な恐怖の対象としてしか扱われていないのが虚しい。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







オマージュの映画?「ロスト・ワールド」という題名からしてそうであるし、『キングコング』や『ゴジラ』へのリスペクトも容易に見てとれるのだけど、肝心の『ジュラシック・パーク』そのものが蔑ろにされているのが悲惨。

今回の主役マルコムも恐竜に愛着を抱いていない男。サラが恐竜に寄せる想いもどこか学者としての野心が覗き、稚気や愛嬌に欠ける。前作と逆に、恐竜が最初から忌まわしい存在として扱われているのは仕方が無いのかも知れないが、それならば更にそこからの逆転も用意して、恐竜などこりごりだという態度のマルコムが、ティラノ夫婦の子供愛に自身のそれを重ねていくようになる、といったベタベタなお話を臆面も無くやってのけるくらいのことは必要だったのではないか。

崖に宙ぶらりんにされたトレーラーのガラスが徐々に割れていくサスペンスに於ける、車内の縦の空間演出や、一匹ずつでは愛らしい小型恐竜が、ワラワラと湧いてくることで恐怖の対象へと転じる演出、この恐竜にハンターが襲われるシーンに於ける、恐竜の数やハンターとの位置関係を微調節することで恐怖の度合いを微妙にコントロールする手法、夜の草原に爪痕のような細長い窪みを刻みつつ恐竜の群れが人間たちを襲うシーンの、次々と草むらに沈んでいく人間たちの姿も併せての禍々しい幻想性、等々、個々の演出ではやはり巧いなと思わせる箇所はあるのだが。プロのハンター集団がゾロゾロと参加したせいで、ドラマが拡散してしまったのはよろしくない。

こんなものを見せられては、スピルバーグが恐竜を単なる見世物的な商品としてしか見なくなったような印象をこちらが抱くのも、やむを得ないところだろう。

(評価:★2)

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