冷蔵庫に貼られた脅迫文のエピソードが好きでした。後を付けられているような気がして小走りに走ったり、暗殺をとても恐れているんだけど、屈しないという気持ちがあり、戦っているんですね。クローゼットとカミングアウトという言葉が出てきましたが、カミングアウトとは、単に周囲に晒すということではなく、屈しない甘んじないということなのだろうと思いました。

同じように非ヒーローな性格として、政治家になりたいけども、選挙活動に携わる種類の人たちとの関わりにウンザリしている部分があり、恋人に政治と無縁の男性を選びます。この辺を全史から抽出するセンスは面白いです。どういうことかというと、恋人は自殺しますが、原因は彼らがゲイカップルだからではありません。ゲイの権利が題材の映画であるにも関わらず、主として全ての人の普遍的な苦難を扱っており、面白いと思うのです。しかも、普遍性によりメジャー作品感をかもしています。

ダン・ホワイトがミルクに、君には政治にもってこいの問題がある、というようなことを言いますが、非常に卑しいと感じました。おそらく、ミルクのゲイ活動家の側面と前述の人間の普遍的な苦難の側面の両方を、本作がうまく描いているため、ミルクがゲイでなくても周囲に人が集まったと思わせるからでしょう。