一面、すがすがしくもあったが、ドラマにおいて描かれた情報をなぞらないのは驚きでもあった。

鷲津(大森南朋)と芝野(柴田恭平)の関係性、三島由香(栗山千明)および西野(松田龍平)の過去、全く何も説明がされない。台詞およびスーパーからわかるようにはなっているが、不親切といわれても仕方がないレベルである。しかしながら、ドラマで描かれた情報が頭に入っていれば、すんなりと楽しめる。緊張感がピンと張り詰めた良作である。

ただ、唯一本作のストーリーで疑問が残るのは劉(玉山鉄二)の顛末。無理に刺殺させる必要性がないと思う。守山(高良健吾)が犯人であれば一応の説明はつくが、全くそういうことではない。ブルーウォールのバックが中国国家ファンドだからそういったことにしたのか、戸籍のっとりの件でという理由付けなのか、素直にとれば所持金目当ての刺殺ということだろうが、緻密さにかける残念な筋書きである。刺されているにもかかわらず血の描写が一切ないのも気になった。

以上、全体を通して期待したものは出てきたということで、この評価とする。

(2009.06.07 TOHOシネマズ川崎)