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[コメント] タイヨウのうた(2006/日)

YUI見たさで内容にはほとんど期待していなかったが、うまく出来ていて感心した。最大の功労者は塚本高史だろう。この役者はいい。
shiono

リアリスティックな描写を主体とする現代商業映画では、例えば勝新太郎の映画のような、役者同士の演技合戦という場面は減少し、より共同作業的な芝居場へと変化している。この映画では、専門外のYUIと職業俳優のコラボレーションが成功していて、相互に刺激しあい、良い部分を引き出しているところに好感を持った。

主役の立場からは、共演者に演技をリードしてもらえたということ。彼女が事前にどれだけレッスンしたのかはわからないが、演技経験の引き出しが無いと、監督が指導してもなかなか理解はしにくいだろう。こうしたときに相手役者の力量が問われるのだ。自分が芝居するだけで精一杯の人間には、塚本や岸谷五朗や通山愛里のような、ナチュラルな呼吸での芝居のキャッチボールはできない。

共演者の側からは、主役を立てつつシーンを構築するという演出家的な役割も負うことで、役者主導の遣り甲斐のある現場になっただろうことが想像できる。また、この異業種コラボレーションにより、プロット一発勝負の単調さから免れているのも収穫だ。専業俳優が定型的な悲劇を演じると退屈するが、型に嵌らないYUIの演技の違和感が反作用して、新鮮さが出ている。

主役というのは、もって生まれたものなのだとつくづく思う。タレント性とかカリスマ性と言い換えてもいいが、努力や技術では身に付けることができないものが歴然と存在するのは確かで、演技の巧拙だけでは一概に語ることができないのが映画のおもしろいところでもある。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)直人[*] 水那岐[*]

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