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[コメント] 戸田家の兄妹(1941/日)

小津には珍しい一種の勧善懲悪劇だが、「父の死」や「都落ち」といったお馴染の主題も見られる。
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**ネタバレ注意**
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ここでの「都落ち」は最終的には「天津行き」という一見いかにも時局にふさわしい形を取っていて複雑な気分にもさせられるが、まさに適当に時局に合わせただけであって、「天津行き」自体にそれほど積極的な意味があるとは私には思えない。『東京の合唱』の「栃木」、『麦秋』の「秋田」、『早春』の「岡山」が「非・東京」の記号としての側面が強いのと同じく。ただ、それらに比べると『戸田家の兄妹』の「都落ち」がかなり前向きなものであることは確かだろう。

佐分利信が父の一周忌の席で兄姉たちを一喝した直後の鵠沼のシーン、すでに斎藤達雄吉川満子らが母に謝罪をしていたことが佐分利の台詞によって明らかになる。その謝罪の場面を丸ごと省略してちょっとした台詞だけで片付けてしまうなんて、まったく経済的というか、痛快ですらある。

佐分利がトコトコと砂浜を駆けるラストカットはしごく愛らしい。

(評価:★4)

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