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[コメント] インランド・エンパイア(2006/米=ポーランド=仏)

デヴィッド・リンチの趣味はきわめて悪い。画面も音楽も趣味が悪すぎる。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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リンチの顔面劇場。呆れるほどのクロースアップ一辺倒は「無芸」のためではなく、それ自体を「一芸」と見るべきなのだろう。物語始まってすぐ、東欧訛りの英語を操るグレイス・ザブリスキーの奇天烈な顔面アップで映画はもうトップギア。あとはもうローラ・ダーンの顔面やジェレミー・アイアンズの顔面やローラ・ダーンの顔面やハリー・ディーン・スタントンの顔面やローラ・ダーンの顔面やジャスティン・セローの顔面やローラ・ダーンの顔面やそのほか有名無名の役者たちの顔面やローラ・ダーンの顔面のクロースアップを呆然と眺めるばかり。

音楽についても、たとえば「ロコモーション」の使い方なんてどうだ。まあロコモーションにあれだけの不穏な空気をまとわせることなんて誰にでもできることではないし、しっかり笑えるようにもなっているのがリンチの偉いところなのだが、一言で云えば、やっぱり「趣味が悪い」としか云いようがない。

これはもう映画の倫理として許されるレヴェルを踏み越えているのではないか、という疑念も拭いきれないのだけれども、そうは云いつつ私はいいかげんな人間なので「趣味が悪いってだけで一篇の映画ができあがってしまうというのもなんか凄いような気がするし、なんにせよなかなか見られないものを見せてもらったよね」とノンキに楽しんでしまった(「なかなか見られない」のは、単にそれがもはや映画の倫理として許されないものだからなのかもしれないが……)。しかし、映画監督が製作も兼ねて好き放題をすることの功罪は今一度真剣に問われねばならないかもしれない。

(評価:★4)

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