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[コメント] ホウ・シャオシェンの レッド・バルーン(2007/仏)

自然光の扱いにかけては現在リー・ピンビンの右に出る者はいないと思わせる。ホウ・シャオシェンにしてもアルベール・ラモリスとは才能の桁が違う。もちろん『赤い風船』もすばらしい映画で大好きだが、これはそれとはまるで別次元の傑作だ。奇跡的な「光」の映画。「反射」の映画。
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映画の至福の時間が流れている。実に豊かな画面が連鎖してゆくことに頬の緩むのを止めることができない。豊かとは、画面の内実が複数的であるということだ。たとえばジュリエット・ビノシュ宅のシーンはほぼ常に複数の人物によって複数の出来事が同時的に進められているが、カメラはそのどれをも特権化することなく、フィックスと柔らかな移動を繰り返してワンカットのうちにそれらを捉えてゆく。ここでも映画の自由を優しく力強く肯定するシャオシェン的ロングテイクは魔法的に心地よい。二シーン間を連続したピアノの調べでもって繋いでゆく手法もそうだ。きわめて「現実」に似た風景を写しながらも、「映画」にしか流れえない時間を描き出している。

風船そのものを写した時間の割合は『赤い風船』よりずっと小さいが、風船の扱いの独創性に関しては一歩も引けを取っていない。風船と「列車」のニアミス。風船の主観ショット。シモン・イテアニュもすばらしい。「アメ百個とキャラメルたくさん」の時点で私はケーオーされてしまう。なんと絵に描いたような子供の発言!

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)赤い戦車[*] ぽんしゅう[*]

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