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[コメント] サバイバル・オブ・ザ・デッド(2009/米=カナダ)

ジョージ・A・ロメロの西部劇。西部劇の骨格・意匠にゾンビ状況を掛け合わせる作劇や、けれん味に溢れたゾンビ扱い(顔面発火! 乗馬!)も嬉しいが、クラシカルな画面造型と銃撃演出が突出して高水準だ。仮にゾンビが一体も出なくとも満足しただろうほどの演出力。シリーズでも『ゾンビ』に次ぐ傑作。
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ロングショットにおいてもフルショットにおいても銃撃演出の距離感・カット割りが抜群にいい。それにしても、ここまでクラシカルな演出に徹して一篇の映画を成立させられる監督は今ほとんどいなくなってしまったように思う。あるいはプロデューサーが許さないのか。傍目から見る限り、現在のロメロはゾンビを登場させることと低予算で制作することとの引き換えに演出の自由を手に入れている。ジョン・カーペンターでさえここまであからさまな西部劇はまだ撮れていないのだ。

さて、今回はキャラクタが皆よいのだが、とりわけオフリン家の主ケネス・ウェルシュがすばらしい。彼のユーモア感覚が映画に潤いを与えている。また、彼を筆頭にして、この映画の作中人物は誰も必要以上に慌てない。騒がない。この種の映画にしばしば登場して観客をイライラさせるグズやノロマは、ここには現れない。信条と信条がぶつかり合う闘争の劇を阻害するようなノイズ的人物はあらかじめ排除されている。少々脇が甘い知恵者と云った感じの「流れ者」少年デヴォン・ボスティックあたりはもうちょっと有効に活用できそうなものだが、なぜかしら射撃が上手いなんていうのはさすがに心得ている。

ウェルシュとリチャード・フィッツパトリックが空砲を撃ち合うラストカットも凄い。シネスコの使い方に絞って云っても『ランド・オブ・ザ・デッド』より二段は上だ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)Sigenoriyuki ExproZombiCreator[*] 赤い戦車[*]

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