コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 殺人の追憶(2003/韓国)

衝撃!なんて凄い作品なんだ。お決まりのパターンをすんなりと破ってくるジュノの度胸には感心する。
かねぼう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







縦横無尽に張り巡らされる伏線は、拾い忘れられることなく、すべてラストの「普通の人」というセリフへとつながっていく。

しかしラストのあの少女の台詞には、ジュノの相当なセンスを感じずにはいられない。「普通の人」という台詞を聞いた後のソン・ガンホの顔といったら!すばらしいに違いないのだが、言葉では語りつくすことができないほど、さまざまな意味を持ってくる。それまでの話の展開を考えれば考えるほど、意味を持たざるを得ないのだ。

感心するところは多々あったものの、特に中盤で犯人の顔を一瞬映し出すところに、ジュノの巧さを感じた。

確かにあの一瞬、私たちは犯人の「普通の顔」を見たのである。しかし私たちにも犯人が誰であるのかははっきり分からない。ジュノは犯人の顔が分からなくなるギリギリの速さで、犯人の顔をブレさせているからである。確かにあのシーンを一時停止すれば、ある程度顔は判別できるかもしれない。しかし、私たちにはそれが許されていない。なぜならばこれが“映画”だからである。

映画は通常、途中で止められることがあってはならない。つまり、ジュノはこれが映画であることを利用して、私たちにラストで極度のもどかしさと、そして驚きを体験させるのである。そして、そこで私たちがしみじみと感じるのは、目撃することの喜びだ。私たちは、“一瞬見る”ということでしか、この映画で体験したような感情は経験できない、ということに気づくのである。そしてこのような視界と時間の関係は、通常映画でしか実現することはできない。

映画の可能性に改めて気付かせてくれる、良い作品だった。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)おーい粗茶[*] 林田乃丞[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。