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[コメント] アイガー・サンクション(1975/米)

自らに課す俳優としての肉体試練は立派なSO-SOサスペンス
junojuna

 自らを試練に与えて映画を躍動させようとする心意気は素晴らしく、それだけでもイーストウッドを応援したくなる挑戦ムービーである。その意味で本作は俳優クリント・イーストウッドのドキュメンタリーとしても成り立つ。そして本作において顕著なのが、イーストウッドの女性観を思わせる情事のプロットである。イーストウッド監督作では、主人公イーストウッド(ここではジョナサン)が女と情事に耽ったあと、ほぼ必ずといっていいほど災難が降りかかる。たいていはベッドの中で無防備な状態にイーストウッドがある時、常にピンチなシチュエーションが用意されており、イーストウッドはいつも不利な形勢に対して飛び上がらなければならない。あまりにも作品中にそうしたモチーフが繰り返される度に、我々はそうしたプロットがイーストウッドの女性に対する恐怖を示しているのではないかと合点する。しかし、もう少し穿った見方をすれば、この主題はイーストウッドに限らず、世のすべての男にも当てはまる本能的な女性恐怖とも思えてくる。もしくは男の生理的欲求に対する自戒的なアレゴリーというべきか、特にヴァンプな匂いのする女と交わった後に一気にピンチへと急降下するシーン提示はホラー性を帯びていて興味深い。ともあれ意識的にせよ無意識的にせよ、主題の表象にイーストウッドドラマへの関心は高まる。深層心理に触れるさりげなさに隠れたメッセージ。なんともシュールである。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人) おーい粗茶[*] 緑雨[*]

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