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[コメント] 雨に唄えば(1952/米)

一挙両得とまではいかないミュージカル映画の過渡的な作品としてSO-SO
junojuna

 やはりレヴュー映画といった範疇で語らざるを得ない一ジャンルの過渡的ムービーである。ダンスシーンとドラマシーンを分け隔てることなく映画に乗せるという点で成功しているか否かで見れば、ダンスシーンの多くは舞台鑑賞視点の固定的なポジションが多く、ジーン・ケリーを始めとする芸人の技を堪能するには十分役立っているが、ドラマとの連携という点で見れば有機的なものを形成するには至らない。しかし唯一、ジーン・ケリーの「雨に唄えば」のシーンは、ケリーのダイナミックな運動とそれをフォローしながら伴奏するカメラのアクションに映画ならではの表現が実現しており、ミュージカル映画の可能性を示すエポックメイキングとなっている。ミュージカル映画やライブ映画が常に孕む問題として、芸のドキュメンタルな強度の具現化をどのような手法で提示するかというテーマがある。これは役者のインプロヴィゼーションをどのように演出するのかというのと同様であるが、その提示方法にこそ作家の個性を評価できるとすれば、本作はその作為のあり方が凡庸なるものとしか言いようがない。映画を作為の総体としてそれを司る作家の表層を評価するとき、そこに有機的な創造性を見ることができなければ、単にコマーシャルなアイドル映画に堕してしまう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ぽんしゅう[*]

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