[コメント] 人生万歳!(2009/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ボリスの身投げシーンを直接映さない(ここは元妻のアップカットに終始)ところ、これに対しての終盤の身投げのあっけなさなど、最近のアレン演出がカマすシンプルな面白さは途轍もないものがある。『地獄の黙示録』への目配せ(カーツ大佐の台詞への言及)や、前述の身投げシーンでの「第9」使用も『時計じかけのオレンジ』の身投げを彷彿とさせ、恐怖と暴力の名作へ敬意を示しつつ否定する要領のよさが愉しい。思索(悪意と恐怖)に耽り周りが見えないまま帰宅するボリスを薄汚い身なりのメロディが突然呼び止めるシーン。BGMのベートーベンが「ブチッ」と切られる。慌てふためき階段から落ちかけるボリス。このセンスがとても好き。この「間」が凄すぎるのである。ベートーベンが苦手で『時計じかけのオレンジ』が好きなら絶対分かる「間」だ(笑
ラリー・デヴィッドは3819695さんが指摘される通りアレンと比べ可愛げが先行しない攻撃的で明確な輪郭をまとっており、ウッドとの漫才の中で醸される「変奏」の味わいがあるのも確かだが、短パンからのぞくぐにゃぐにゃしたなまっちろい足を引きずったり、枯れ木のような腕を一生懸命振ったり頭を抱えるアレンも観たいと思うのも、また確かな話。
ところで、メタな直接的語りかけが「切実」なアレンの心情を吐露しているように私には見え、「今語らねばならない」という覚悟というか、何よりアレンも年なんだよな、という事実に思いを馳せると、軽やかな語り口と見てくれに、かえって重さを感じないでもない。
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