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[コメント] ロスト・ハイウェイ(1997/米)

それまで「穴」「光」「カーテン」を介して異世界と繋がっていたのが、ここから「顔(肉体)」「名前」を介してねじれた迷宮を創造するようになった。それらが「穴」(結節点)になったのだ。そして「穴」は拡散し、偏在するようになる。何が中で外か、前か後か、果てない混沌が広がる。変哲のない部屋、陽光をこれだけ恐ろしく、しかし蠱惑的に撮れる監督はやっぱりいない。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ビル・プルマンカイル・マクラクランに、ロバート・ロッジアデニス・ホッパーに似ているのもメタ的にスリリングだ。「顔」という記号の機能がめちゃくちゃに破壊されているのである。

続くカットの前後で同じ顔の人物が登場した時、それが同じ人物であるという確証がどこにあるのだろうか?あるいは違う顔の人物が登場した時、それが同じ人物でないという確証がどこにあるのだろうか?自明とされた約束事、記憶と時間、映画の破壊に、ひたすら心かき乱される。そして、本作には、後作には用意されたどこか安らいだ光景などはない。デヴィッド・ボウイの楽曲に僅かに鎮魂の情があるだけだ。スーパークールな振り切れ方である。ひたすら怖い、しかしいかがわしく甘美で浸っているのが気持ち良い、やっぱりこんな作品を撮れる人は、後にも先にもないだろうと思わせる。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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