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[コメント] アンネの日記(1959/米)

本作が価値高いのはまず本物のアンネの隠れ家で撮影されたことだろう。相当セットが混じっているが、それでも感応させられる磁場が確かにある。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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舞台劇の翻案(そのまま脚本家をつとめている)で、優れた舞台劇の良さを存分に鑑賞できる。アンネの「大冒険が始まりました」「子供はどこでも愉しみを見つけるものよ」の宣誓、序盤の子供たちの洗濯物で隠れん坊の喜劇がいい。愉しくて儚い切なさに溢れている。中盤の猫のドタバタは優れており、みんな疲れて寝ているショットで猫も寝ているのがいい。物音立てまくる猫を早く捨ててくれと思わざるを得ない。そして恐ろしいパトカーの警報、本棚から漏れて全員の顔を舐めるライト。靴を脱いで歩く床。結末も知り尽くされた作品な訳だが、それを逆手に取って、結末から入ったり、ラストは逮捕のシーンを略したり(それは残酷すぎただろう)、どの配慮もいいものだと思わされる。

12月7日のハヌカという儀式。ノルマンディ以降も7月には手詰まり、とある。相部屋する同居人とのいがみ合いが実にリアル。愚痴だらけの閉塞感。ヒッチコックみたいなルー・ジャコビの利口だか馬鹿だか判らない臆断の連鎖はすごいものがある。シェリー・ウィンタースは千石規子さんにやたら似ている。

最後にアンネの性善説が二度説かれる。これは日記に当たるべきなのだろう。本作は性善説へ至るアンネの生活の状況を述べたもので、導きに過ぎないだろう。日記は未読。読む機会を持ちたいと思った。

ただ、お姉さんとの三角関係で、終盤はお姉さんが置いてきぼりになるのはちょっと彼女に気の毒。現実にはリアルなことなんだろうけど。視覚的には長くて細くて急な階段がすごい。窓から見える鳩はちとベタだがベタが求められる映画ではある。

なお180分版(前後の音楽のみの場面を除けば170分版)で鑑賞した。Wikiも英版では180分なのに日本版には150分とある。別バージョンがあるのだろうか。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)KEI[*] ぽんしゅう[*]

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