[コメント] ミツバチのささやき(1972/スペイン)
子どもの目を通した表現は「どんな大人になりたいか」ということだと思う。偏見を持たず、弱者を忘れず、意地悪をせず、信じることができる大人に、わたしもなりたい。
タイトルバックの鮮やかなイラストでまず引き込まれ、けだるい田舎の村での淡々とした展開に抜け出せなくなる。ヨーロッパという文化の違いを見せつけられた。
線路の音を聞く姉妹が立ち上がった時、その頬が土埃でよごれているだとか、カフェオレボウルから顔を上げたアナの口の周りのミルクの跡だとか、ベッドに這い上がる子供の足の裏の汚れ。そういう細部を通して、アナの性質や子供の一所懸命さも感じる。
また、遠くはあくまで遠くに風を感じ、公民館での村人のまなざしは生き生きと、みつばちや暗闇は静かな生をかもしだす。レンズは風景と暮らしを一体にあぶりだす。
「そのものズバリ」を表現せずに象徴として暗示していく手法にも魅せられる。スペインの歴史を背景に、働き蜂たる父と諦め感のある母、おませな姉を対比させ、アナの行く末に光を見出すラストも好感。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (2 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。