冒頭の雪が降る中の処刑や一連の訓練、東南アジアロケの雑踏や狭い路地など映画的な要素はいくらでもあるのにそれらがまるで生きてこないのは明らかに演出家の力量不足が原因である。深田恭子の写真が火を繋ぐ場面などはアイデアそのものは決して悪くないのに見せ方がまどろっこしすぎる。『陸軍中野学校』からほぼそのまま場面を頂いているのも芸が無く、本作は映画的記憶だけに頼りすぎで現場での創意工夫が全く感じられない。

全編に渡りユーモアが欠乏気味なのも良くない。笑えたのは中盤追手からの逃走シーンで敵を顔のツボが描かれた布越しに殴りつけるところぐらいしかない。いや、恐らく笑わせようとしている場面は他にもたくさんあるのだろうけれどどれも滑っているように感じられる。それは勿論演出もまずいのだが、やはりキャスティングのまずさが一番の原因だろう。脇役や深田恭子はまあ及第点としても、主演の亀梨和也の演技にまるで余裕が感じられないことが何よりも辛い。余裕が無いからユーモアが冴えない。クソ真面目な軍人という役は彼の余裕の無さを誤魔化すための設定だとしか思えない。