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[コメント] 殺人者にスポットライト(1961/仏)

遺産相続殺人に相応しい、謎と陰謀の目眩くアラベスクを期待すると拍子抜けするが、同じ監督の後年の作品と同様、おとぎの森や湖畔の古城を使って、素朴な幻想の陰画が試みられていることに合点がいけば、見所は事欠かない。
濡れ鼠

たとえば、『ポーラX』のドヌーブの深夜のバイク爆走を想起させる騎馬のカット(伯爵夫人が城から抜け出して夜の乗馬を楽しんだ後に気になる下男のいる厩舎へ戻ってくるシーン)。 まるでメリーゴーランドを楽しむ少女のように白馬にまたがるポーズの躍動感が、夜闇に解放された欲望の高ぶりと見事に連動している。 ぴかぴかの乗馬服をまとった夫人が短鞭や鞍を介して反抗的なイケメン下男を誘惑する場面も、揺るぎのない支配・被支配の関係が歪なまでに強調されて、たまらなく官能的だ。視る者の欲望を掻き立てるのに、暗示的な身振りのほうが効果的である好例。

一般公開の舞台で中世の惨事を再演しようとする<光と音のスペクタクル>は、先祖の犯罪が一族の末路を呪縛するというゴシック小説の王道を、無人の古城で、演者を一切使わずに、音響と照明とカメラワークの創意によって(空間を満たすのではなく、逆に解放することによって)刷新しようとする。それが演出家の思惑通りに功を奏しているかは別として、目に見えない亡霊の気配=世代間の因縁の力を常ならぬ手であらわにしようとする試みとして一見の価値がある。

7.5/10

(評価:★4)

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