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[コメント] シングルマン(2009/米)

デカダン!デカダン!
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







個人的には終始ニヤニヤし通しの映画だったが、野球で言えばコーナーギリギリの変化球みたいな映画で、ストライクかボールか微妙。審判がどっちのコールをしても不思議はない。

ファッションデザイナーが監督初挑戦だそうで、映画畑以外のアーティストが監督する映画というのはビミョーな場合がしばしばある。 日本なら写真家・操上和美が監督した『ゼラチンシルバーLOVE』がそうであるように(もっと適した例えがありそうなもんだが)、「映像は美しいんだけど話がねぇ」「映画としてはどうかねぇ」みたいな。 何がそうなる原因かと言うと、「映画に不慣れなもんだからベラベラしゃべるパターン」と「美意識が強すぎて思わせぶりだけの独りよがりパターン」が考えられる。 いや、実際この映画も後者のパターンなのだ。

ところが、この映画の思わせぶり、その徹底っぷりが、私個人には結構ツボで、終始ニヤニヤ観ていた。 要するに『鬼火』なのだ。 いや、望月六郎じゃないよ、ルイ・マル。 そう。この思わせぶりはフランス映画的な思わせぶりなんだ。

まあ、分かりやすいと言えば分かりやすいんだが、現実と回想の色彩が徐々に逆転してくるのね。 現実は生きている感覚を失って色褪せ、想い出だけが鮮明に蘇ってくる。 ベタではあるが、映画はそういうことを“視覚的に”表現できる媒体。 初監督でそういうのをやってみたいという気持ちもよく分かる。

映画畑の荒戸源次郎『人間失格』よりはるかにデカダンの香りがしたよ。

(10.10.31 新宿バルト9にて鑑賞)

(評価:★4)

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