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[コメント] ベイビー・ブローカー(2022/韓国)

是枝の『万引き家族』(<何を言ってるんだ?)
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今更なことを言いますけど、是枝監督は「家族のあり方」を問い続けている作家なのだと思います。

劇中、「売春婦が男を殺して子供を捨てた」と、まるで新聞か週刊誌の三面記事のような要約をIU自身がしますが、是枝の映画ってそういう風味があるとずーっと思っていました。つまり、新聞や週刊誌のほんの数行の三面記事の「背景」を膨らませたような話。文字にしてしまえばほんの数行にまとめられてしまうような小さな話かもしれないけど、そこに関わった人々にとっては人生を左右するような大きな物語。世間を揺るがす大事件ではないし、誰かを一方的に分かりやすい「悪」にすることもない。むしろ、世間的に「犯人」と呼ばれる側に優しい視線を向ける。その「小さな事件」を通して見つめる「家族のあり方」。

それが、是枝「らしさ」。そういった意味では、長編4作目だけども『誰も知らない』がある種の原点のように思います。

ただ、是枝の描く「社会性」は、時々「うるせえよ」って思っちゃうんですよね。なんだろう?たぶん、身近すぎるんです。ところがこの映画は、お隣の韓国なので少し他人事に思えちゃうんです(本当は他人事じゃいけないのでしょうけど)。それが丁度いい塩梅だった。

カトリーヌ・ドヌーヴ女王様にジュリエット・ビノシュにリュディヴィーヌ・サニエ嬢という俺好みの女優陣プラス、マノン・クラヴェルという超絶俺のツボの新人女優を起用した『真実』に続く是枝の「外国映画」。この、是枝の「ボーダレス」感と、本作で描かれる「ボーダレス」な家族感はリンクすると思うんです。おそらく『万引き家族』で救えなかった子供たちを「ボーダレスな家族」で救うという映画だったのだと思います。

相変わらずと言うか、映画の完成度はめちゃくちゃ高いと思うんです。私がこの前再鑑賞した『空気人形』は、リー・ピンビンのフワフワしたカメラが特徴的でしたが、この映画はビシッと決まったフィックスの画面が美しかったんですよね。

この映画、完成度は高いし、観た直後はいい話だと思ったんですが、多くの人の感想・物語の解釈が似てるんです。私がこの映画を観ていて抱いた感想は、既にシネスケで誰かが書いている。家族論とか、『万引き家族』のアンサームービーだとか、いい映画だとか、考えさせられるとか、逆に詰め込みすぎだとか、IUがツボすぎてムラムラしたとか。ムラムラしたのかよ。

(2022.07.17 吉祥寺オデヲンにて鑑賞)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)緑雨[*] おーい粗茶[*] けにろん[*]

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