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[コメント] ジャッキー・ブラウン(1997/米)

香港映画を観た黒人は45口径を2丁買う。(「スペインの雨は主に荒野に降る」みたいだ)
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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2022年に再鑑賞。公開時以来、ほぼ四半世紀ぶり。実はほとんど記憶に残っていない映画だった。サントラ盤でボビー・ウーマック「Across 110th Street」は死ぬほど聞いてるんですけどね。

公開当時は、正直、大して面白いと思いませんでした。前2作『レザボア・ドッグス』、『パルプ・フィクション』がかなりトリッキーな作りだったのに対し、本作は比較的オーソドックスな作りで物足りなかったんだと思います。グダグダしてるし。当時はトリッキーな作りがタランティーノ節だと思っていたんですな。四半世紀前の私はまだ若く、この映画の面白さを理解するには未熟でした。髪もふさふさだったし(<それは関係ない)。

今回観たら、最高に面白い。

その端的な例が、見出しにも書いた2丁拳銃のくだり。「香港映画を観て銃を2つ欲しがる」って聞いて、当時は「無駄話」に思えたけど、いまはジョン・ウー「ネタ」だって分かる。当時はまだジョン・ウー映画を観てなかったと思うし、ジョン・ウーも世界的有名監督ではなかった。いや、水着の女の子が銃をぶっ放すビデオ(本当にあるビデオなのかな?日本なら美女の温泉紹介番組みたいなもんだ)を見ながらサミュエル・L・ジャクソンとデ・ニーロがグダグダ話してるだけで超面白いんだけどね。

あと、今にして思えばクリス・タッカーだったんだけど、サミュエル・L・ジャクソンとトランクに入れ嫌だとグッダグッダ話してるのとか、超面白い。そのえらく長い会話と、思わせぶりな間と、車がぐるっと回るワンカット長回しの衝撃。このシーン、今にして思えば、時代を象徴するシーンと言ってもいい名シーンだと思うんです。誰も言わないけど。

90年代アメリカは、かなり治安が悪かった。日常と死が隣り合わせにあったと言っても言い過ぎじゃないってくらい治安が悪化していたらしい。この車がぐるっと回って塀一枚隔てた向こう側に行くシーンで、日常と死が塀一枚の隣にあることを表現しています(意図的か無意識かは分かりませんけど)。ほんの数分前までグダグダしゃべってたんですよ。アジア人は信用してるが、初めての取り引きは一人で行かないのが鉄則だとかなんとか。でも、数分後には殺されている。その境界はわずかなものでしかない。タランティーノは、バイオレンスシーンの前にグダグダ無駄話シーンを入れることが多い。それはまるで、生と死、日常と非日常が皮一枚の隣り合わせだと言っているように思えるのです。

ただ、このグダグダした無駄話シーンを面白がっちゃうと、その後真面目にストーリーが展開していくのが、逆に物足りない。パム・グリアの計画とか騙し合いとかどーでもよくなっちゃって、駐車場で車が見つからなくてキレるデ・ニーロとかの方が面白くなっちゃう。

そう言えば、パム・グリアがサッと銃を出す練習するでしょ、あれ、『タクシードライバー』パロディーじゃないかと思うんだ。違うかな?

(2022.07.23 池袋HUMAXシネマズにて再鑑賞)

(評価:★4)

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