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[コメント] ガメラ2 レギオン襲来(1996/日)

最終手段としての“自衛隊防衛出動”これこそ、従来の怪獣映画の枠を打ち破った最大の要素。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 本作のクライマックスは、憲法第9条に則って自衛隊がついに防衛出動するというもの。そこへに仙台で死んだと思われたガメラが飛来、レギオンに再度戦いを挑む。2頭の決戦をただ見つめるしかなかった自衛隊だったが、ガメラがレギオンの進路を阻むような行動を示したことから、ついに「怪獣との共闘」を決断する。人命救助に徹していた自衛隊が一転、出動するという形で話が最高潮を今までに無い展開には正直燃えた。今までの怪獣映画にありがちなパターン「怪獣が出現すれば即出動して、全滅してやられて帰ってくる」ような存在だった自衛隊は、そこには無い。

 「自衛隊が実戦で出動するからには、これは大変なことなんだぞ!」といわんばかりの構成。いや、事実そうである。市街戦を行うというのは、もはや“最終手段”なのだ。クライマックスとして自衛隊を持ってくるのは至極現実的な展開でありつつも、どこか非現実のように思えるかもしれないが、それはズバリ「防衛出動なんて起きない」と心の片隅に考えているからであり、さらにこの展開に意外性を覚えたならば「怪獣が出れば即出動する“映画の中の”自衛隊」に慣れすぎているからに他ならない。その辺の常識を思い切り打ち破ってくれたのが、自分が大好きな“怪獣映画”であることに、心から感謝するのである。

 そして後に金子監督はこのパターンを『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』にも応用する。怪獣が都市(というか、日本)を襲う理由を本作で見せた科学性ではなくオカルトに求め、さらにかつてゴジラを駆逐したのは日本を護るべき防衛隊ではなかったという現代の歴史を作り上げた。こうすることで防衛隊はゴジラに対し、“くに”を護るための“真の決戦”に挑むことになるので、当然クライマックスは燃える展開になる。同じく“くに”を護る存在の“護国聖獣”と「怪獣との共闘」を行うことでその燃え度は激しくなるのだ。クライマックスをただ眺めているのではなく怪獣同士の戦いに絡ませるならば、本作&「GMK」のような「共闘型」にするか、あるいは「×メカゴジラ」のような「一体型」にするしかない。

 しかしいずれの作品と比較しても、現実感の強さは本作の方が一枚上手。もっともこれ以上現実感を出せという方が無理であり、むしろ辿り付く所まで辿り付いた様な映画でもある。だとすれば次に来るべき怪獣映画は何を追い求めるべきか? 本作以降の怪獣映画は、その点で迷走していたような気さえするのである。

(評価:★5)

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