[コメント] レイジング・ブル(1980/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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微妙にムキムキじゃないが、微妙にムキムキじゃないのを演技力が血しぶきをあげながら呼応する様は、どの肉体派俳優よりも素晴らしかった。
72.5kgから97.5kgまで体重を増やした偉大なる俳優ロバート・デ・ニーロの肉体七変化は見事としか言いようがない。まず、そこに映画マニア(アカデミー賞会員)はブラボーと叫んで満場一致で、その体質に敬意と演技に賞賛を示したのであろう。
さらに、ロバート・デ・ニーロ自身、イタリア移民でNYで逞しく育た。そして自身が監督製作出演した作品である『ブロンクス物語』があるように、彼のプロ根性の原動力をそこ『イタリア魂』に感じざるを得ないだろう。彼を無数のリアルな魂が下支えし、彼はスクリーンで彼らを称えたのだ。そしてその事を、素晴らしいファイトで確かに存在する事をロバート・デ・ニーロは見る者たち全てに、しっかりと叩き込んでくれたのだ。素晴らしいに尽きる。
《ラスト》
スタッフ表がパタパタと変わり、無音がそれをサポートするのだが、無音なはずなのに頭に反響している声がある。「why!why!why…」という声ではなく、第二の人生というリングに挑戦する男が出す腕を振る音だ。それは彼の腕が出せる声であり、彼の喜びの雄叫びである。
…そして彼の背にある重荷は、いつしか財産となり彼を、そして伝道師を前へと導く。
━━━そこでパリサイ人たちは盲人であった人を もう一度呼んで言った。「神に栄光を帰するがよい あの人が罪人であることは私たちには分かっている」すると彼は言った。「あの方が罪人であるかどうか私は知りません ただひとつの事だけ知っています 私は盲であったが今は見えるということです」《新約聖書 ヨハネによる福音書第9章24-26より》
2002/11/22
《蛇足》マーティン・スコセッシ監督は大のボクシング嫌いだそうだ。だろうなという描写が随所に見られるが、彼はボクシング嫌いを十二分に活かしきっているといえるのではないだろうか。ボクシング嫌いではなく、ボクシング好きであれば、違った方向に進み駄作だったのかも。
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