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[コメント] ラスト・プレゼント(2001/韓国)

なぜ“仲の悪い”設定なのか。が、この“仲が悪い”という設定あればこそ、
なつめ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「妻は余命いくばくもない」と知った夫の、妻に対する第一声及びその態度という素晴らしい起爆を果たす。すべてを知っている私たち観客は、そのふるまいのせつなさを苦しいほどに感じるのだ。

「家族写真」のところで、それ以降の涙を我慢することができなくなった。

妻は夫に自分が死ぬことを隠し通そうとし、夫もそれに合わせて知らないふりをしようとする。ところがある日、再び倒れた彼女があくまでも意地を張り通すのを見た夫が「病気のことは知っている。なんで俺に甘えないのか」と爆発し、私は実際ほっとした。この物語は、『八月のクリスマス』と比べたくなる内容だけど、『八月〜』はその「秘めることの美学」が強すぎて、あまり好きではなかったから。

二人の間には数年前に亡くした子供がいるという設定も、夫が一人墓を前にしての「もうすぐママがそっちへ行くよ」というセリフで観客の涙を絞り取るにはかなり強力なもの。

夫婦に絡む、悪者に徹せない詐欺師二人の使い方もうまい。妻が死ぬ前に会いたいと思っている人を探してくれと、夫が詐欺師たちに依頼をし、彼女の幼い頃の友達、恩師、そして彼女が忘れられないでいるらしい初恋の人は誰なのかを巡る旅が始まる。彼女の初恋の人は誰なのか、それは大方の想像通り、現在の夫なのだということがわかるが、これは最後の閉じ方に効いてくることになる。

成功しつつある彼の舞台での姿を観客から見守りながら息を引き取る妻。最後に目にする光景が愛する人、それも彼女が望んだ成功した姿であったのは幸福だったのだと思うし、願う……。

遺された箱の中に入っていたのは手編みと幼い頃の夫の写真。「いつからあなたを好きだったのかわかる?」との言葉に続いて、映像は彼女の代わりに木の枝から紙を取ってくれた彼というエピソードと、先生が彼を写真で写すところを見た彼女が「先生、その写真私にもらえませんか」と問うセリフで終わる。物語の閉じ方がとても美しくてまた涙が出た。

映画館だったので滂沱程度に抑制してたけど一人でみていたら号泣だったと思う。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)sawa:38[*] にゃんこ[*] makoto7774[*] ことは[*]

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