[コメント] 黒い牡牛(1956/米)
動物の所有権とは何だ、という批評が本作の主題だろう。『メキシコ万歳』でも賛美されたメキシコ闘牛。トランポは闘牛など嫌いだろう。物語はギリギリの処を進む。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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序盤からイタノを闘牛にしたくないと少年は繰り返し表明し、やたら物分かりのいい父親が賛成したりする。闘牛として売り飛ばしたほうが儲かるだろうに。イタノに傷を負わされた青年の彼女は、これで彼が闘牛士にならないからと喜ぶ。しかしイタノは強くて闘牛向き。少年守って豹を撃退したりする。
そしてすり鉢型もの凄いメキシコ競技場。メキシコ建国の父フアレスへの尊敬が述べられ、大統領へ直訴という田中正造みたいな展開、撮影当時の大統領がまるで邦画の天皇のように背中姿で登場する。大統領の居場所を以外にも簡単に教えてくれる門番たちというギャグがいい。
そして物語はギリギリの収束に至る。牛を殺さずに恩赦するのは1937年以来とアナウンサーが喋り、そして37年以来のことが起きるのだった。しかしイタノは殺されずにすんだが、それ以上ではなくて闘牛はこれからも続くのだから、動物の所有権にかかる抜本的な解決には遠かろう。もちろん、抜本的な解決など千年単位で考えなければ無理だろうが。
トランポのメキシコ期の産物。メキシコ舞台で英語とスペイン語のチャンポン。偽名でアカデミー賞まで獲っちゃって、バレバレで困っただろう。牛の生態と闘牛について詳細なのがいい。ビクター・ヤングは序盤から盛り上げ過ぎだと思うが終盤は気にならなくなる。ジプシー(ロマか)の言葉と云われるイタノという牛の名前の語感が魅力的。
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