[コメント] サンダーボルト(1974/米)
「毒食わば皿まで」
若き日のマイケル・チミノの鋭い映画的感性が溢れ出た作品で、そこが物凄い魅力。何と言うか、脚本まで書く人でありながら、監督という立場になるとストーリーよりも魅力的なカットを獲ることを優先させちゃうような人ってな感じがすごくよく出ていた。
例えば、オールロケにも関わらず気持ちいいくらいに真っ青な空ばかりであったり、車が走るシーンでは西部劇で馬が走る時のように煙がモクモクしていたり、アクション映画顔負けのスタントがあったり、ちょっと小津風の切り返しのカットがあったり(ここまで言うと言いすぎかな?)等、「ここまでやったんならもう一歩踏み込んでここまでやろうよ」的な彼なりのこだわりが感じられるシーンが溢れていて、映画としては楽しいことこの上ない。
こういう人に好きなように撮っていいなどと言ってしまったら、本当に好きなように撮るんだろうなという感じがビシバシ伝わってきて、のちにUAを倒産させたって話にも納得してしまう。
欠点がないわけではない。肝心の銀行襲撃のシーンなどはどうも緊迫感に欠けるし、全体的なまとまりとしては勢いだけで何とかしたという感も否めず、叩こうと思えばいくらでも叩ける作品でもある。
が、ここまで楽しませてくれたのなら細かいことには目をつむり、劇中のジェフ・ブリッジズではないが「毒食わば皿まで」とこの作品を楽しんでしまうのが正解だと思う。
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