[コメント] ポルターガイスト(1982/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
テレビが何らかの理由で他のチャンネルの電波を拾ってしまう事を「ゴースト現象」と言うが、外から家に入って来る「Poltergeist」(=騒がしい霊)とは、テレビの事かとも思えてくる。ラスト・カットで外に出されたテレビを見た瞬間、この映画のメッセージは「テレビから離れて、家族で向かい合いましょう」なのか?と。
この‘よそからの侵入者’は、隣家のリモコンのせいで局が変わってしまうテレビだとか、プールの工事に来た男が窓から勝手に食べ物を取ったり、年頃の娘をからかう、といった場面で、予め、さり気なく描かれている。また、子供部屋の四角い窓の外で点滅する雷光や、影の不気味な樹などは、同じく四角い画面を点滅させ、何者かの存在をちらつかせるテレビのアナロジーだろう。
ノイズ画面を見つめる少女の後頭部の不気味さや、彼女、キャロル・アンのあどけない動作が、暗い部屋でのテレビの点滅のせいでコマ撮りのような異様な動きに見える辺りが、この作品の恐怖演出で最も優れた点だろう。これと並ぶのは、子供部屋に横溢する光の暴力性だ。
その一方、幽霊、というか、モンスターの造形は、余りにお化け屋敷風に過ぎる。子供部屋で宙を舞うレコードプレーヤーや電気スタンドなども、制作者側が稚気に走りすぎている印象がある。
前半での、小鳥の死骸をトイレに流そうとするのをキャロル・アンに見つかる母ダイアンや、キャロル・アンが棺代わりに鳥を入れた箱が、プール工事で掘り起こされる場面、ノイズ画面を見つめるキャロル・アンにダイアンが「目に悪いわ」と言って変えたチャンネルが戦争映画、といった、死の軽い扱いへの批評性をさり気なく入れた演出は良い。
最終的な解決者としてやって来る霊媒師は、背丈や声が、幼女のよう。ひょっとしてヘザー・オルークが特殊メイクで一人二役なのかと思ったくらいだ。二人が同時に映っているショットも無かったように記憶している。
テレビや雷という、外から家に侵入してくる光に怯えていた一家だが、実は彼ら自身が、死者の居場所に侵入していた。闇よりもむしろ光を恐怖の対象としている点が演出的に面白味のある所で、ダイアンがプールで骸骨どもと遭遇する場面でも、骸骨の側に、電球の光が吊り下がって揺れていた。
遂に家から一家が逃げていく場面では、途中の看板に「ここでお別れ」と書いてある。これは、いったんは霊媒師によって一件落着、と思わせておいて不意打ちする演出を行なっていたので、「ここで本当に終わりですよ」という目配せだったのかも知れない。だがこの直後、一家が辿り着くホテルのネオンが映るのだが、星型の青い光という、家を飲み込んだ青い光を連想させるショットが一瞬挿入されるのだ。この辺の、分かる奴だけ笑ってくれといった調子のふざけ方(として僕は解釈)は、ちょっと好き。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (3 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。