[コメント] この世の外へ クラブ進駐軍(2004/日)
心地よい軽さ。それは諸刃の剣でもある。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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萩原聖人、オダギリジョーら五人は、戦争の傷の癒えない日本の風景のなかでどこか浮いている。これは意識的にそうしているのだろうが、現代の若者たちがそこに放り込まれた感じなのだ。
だが、そこに嫌悪感はあまり感じなかった。そうすることによってこの時代の希望を増幅させて伝える効果となっているように思えたからだ。事実、希望だけではなく、家族の被爆や赤狩りなどという影が差してくるにもかかわらず、この物語は暗く澱んだものにはならなかった。言わば好ましい程度の軽さだ。
しかし残念なのは、上手く戦時中の空気を呼吸している俳優を相手にしたときだ。シェー・ウィガムは弟を日本兵に殺され、逆に日本兵を殺す夢を見て目覚める典型的な嫌日軍人だ。彼の影はまわりの誰よりも濃く、その前では萩原らもうすぼんやりとしてしまう。彼らにはぐくまれる友情には、例えば『戦場のメリークリスマス』のハラとローレンス並みのぶつかり合いが必要ではなかったかと思う。それでこそウィガム亡き後の悲しみも浮き彫りにされるものであるだろう。
残念といえば、バンドマンの一人村上淳の弟である少年が、見てきたような上手さで浮浪児役を演じていたのも特筆すべきことだったのだが、彼の前では村上がひどく存在感を欠いてしまう点にもマイナス点を付けざるを得ない。
このように軽さは、この映画においてまさに諸刃の剣であったと言えるのではないだろうか。
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