[コメント] ロスト・イン・トランスレーション(2003/米=日)
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私は基本的に独りが好きである。何日間も誰とも話さなくても平気だし、誰と会わなくても平気。部屋に閉じこもって本か何かさえ与えてもらえればいくらでも独りで過ごせる。ただ自分のテリトリーを外れた時に訪れる孤独が好きかと言われれば、否、である。だからいくら独りが好きな私にも、彼女の孤独感はよく理解出来る。あの不安な表情には見覚えもある。それでも何故か彼女に共感する事は出来なかった。
日本人がガイコクの人に劣等感を抱いているのは認める。他人に興味がない人が多い事だって認める。語学力のなさだって百も承知だ。東京(しかも新宿)という街の薄気味悪さは私だって感じる。けれど彼女の孤独感の中にはどこか傲慢さが見え隠れしている風に感じた。突然放り込まれた見知らぬ地を、自分のテリトリーよりも見下しているように見えたのだ。
ホテルの部屋で窓越しに東京の街並を見おろす。・・・見くだす。孤独から開放されたいというよりも、東京から開放されたい。私にはそういう風に見えた。
それでも一部の人間とはコミュニケーションが取れる。それがまた小さなコミュニティを形成している特異な人たちだった事に苛つく。何も彼らが嫌いな訳ではない。藤原ヒロシの音楽は私は本当に大好きだし、HIROMIXの撮る写真も好きだ。そうではなく、彼らを「自分の輪に入れる事を許した」彼女の、無意識の傲慢さのようなものに嫌悪を感じたのだ。もしくは「お友達自慢」のソフィアに嫌悪を感じたのだろうか(むしろこっちが本音かも)。
映画としてはまずまず面白かった。画作りも音楽もソフィアらしいセンスに溢れていた。それでもやはり仄かに感じる傲慢が、常に私を現実に引き戻した。それは私が日本人だからなのだろうか。日本人である自分の被害妄想なのだろうか。それとも醜い劣等感なのだろうか。
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04.10.08 記
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