[コメント] 歴史は夜作られる(1937/米)
ファーストカットが手前に水上飛行機の羽根、奥に海に浮かぶ豪華客船を天上から映した大俯瞰で、もうこの時点でこの映画の出来具合が推量できる。しかし何といっても後半の船上の描写、特に霧の表現が見事だ。このあたりは全くもってグレッグ・トーランドの刻印。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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シャルル・ボワイエが宝石泥棒を装ってジーン・アーサーを救い出すホテルの部屋のローキーの画面。シャトー・ブルーというレストランの料理長シザーを演じるレオ・キャリロのコメディ・リリーフ。ボワイエとアーサーが何のためらいもなく恋に落ちるご都合主義。ニューヨークのレストランでの邂逅シーンでアーサーが笑い転げるという、ちょっと不思議な(しかし違和感のない)演出。このような具合で中盤もトントンとプロットを転がして好調だが、しかし何といっても後半の船上の描写、特に霧の表現が見事だ。このあたりはグレッグ・トーランドの刻印を感じる。氷山衝突からのパニック・シーンでは微妙に斜め構図のカットの連続で見る者の不安感をあおるのだが、こんな表現もこれ見よがしで無くさりげないところがいい。救命ボートにアーサーを乗せようとするシーンは実に感動的だ。沈没を免れ、歓喜する乗客たちを映したカットはちょっと技とらしいがそれでもよく撮れている。また、アーサーの夫を演じるフランケンシュタイン博士・コリン・クライブの悪役造型は少々類型的だがそれでも見事な存在感を残す。
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