[コメント] スチームボーイ(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
「科学は力だ」この明快な信念のもとに、爽快なほどにロンドンの街をどかどか破壊する(よその国の街が壊されるのを眺めるのは気楽なものだなあ)巨大な「スチーム城」を動かし、数々の兵器を操り、その圧倒的な力を誇示する科学者。
「科学とは宇宙の真理を明らかにするもの。哲学なき、心なきものは科学ではない」と言い切り、力を見せつけるだけの機械の破壊に奔走する科学者。
真っ向から対立する「科学」に対する立場でありながら、それぞれが自分たちがつくり上げた科学の成果=「スチーム城」のことを熟知し、それには絶対的な自信をもっている。そして見事なまでに、己がつくりだした科学のみに殉じる気概をもち、それ以外はいっさい気にかけない、純粋な独善。(あの俗世の利益と栄華を求めたイギリスのエセ科学者をみよ)
この親と子の、科学をめぐる対立と一致が、しびれるほどの緊張感を生み出している。 そしてこの行動する科学者たちの姿こそ、科学のなんたるかをつかむことができる唯一の道である。だから、祖父と父親のはざ間において、みずからハンマーとスパナを持ち、空をかける少年の姿は正しいのだ。彼こそが、未来の科学を背負う正しい「マッド・サイエンティスト」だ。
そして悪役はあくまでも悪役らしく、理由と必然がなくても、主人公に襲いかかる。うむ、悪役ってのはそうでなくちゃあ、いかんのだ。
さらに感動的なのは、噴き出るパワーを思わせる蒸気と、巨大な歯車と鋼鉄の腕、鎖とベルトでガッチャンガッチャン、ギリギリゴトゴトとけたたましい騒音を響かせて動きまくる機械だ。ともかく動いているという実感、躍動感あふれる機械たちだ。
本当にあれが必要なのかとか、あれできちんと動くのかとか、言い出したらきりがないが、それでも目に見えて動いている、この心をワクワクさせる、楽しさに満ちた迫力はどうだ。素晴らしいじゃないか。
二人のマッドサイエンティストが生死不明になるラストや、エンディングが次回作の予告編になっているかのような、せせこましさは気になるが、まさに製作者も含めて、そういうせせこましさこそが凡人の証であり、逆にそれを超越したところにいるマッドサイエンティストたちの素晴らしさに華を添えている。本当に見てよかった、心をワクワクさせられた、素晴らしい一本だった。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (6 人) | [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。