[コメント] GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995/日)
これは漫画家士郎正宗の同名漫画の映画化作品。
士郎正宗というと、その骨太なストーリー展開と膨大な設定量。そして巧妙なストーリー展開が受け、彼の漫画の大部分は映像化されるに至っている。GAINAX制作の「アップルシード」、オリジナルストーリーとなった「ドミニオン」、そして原作者自身が監修した「ブラックマジック」…それらの作品は大体鳴り物入りでアニメ化されたのだが、全て「失敗作」の烙印を押されている。
彼の作品は一見アニメ向きに見えつつ、実はこれほどアニメ化しにくい作品も珍しい。ある意味、彼の作品は時代の先を行き過ぎていたと言えよう。
一応原作者のファンで、何度も裏切られてきた私としては、この映画化の話を立ち読みの映画誌で見かけたとき、さほど気にかけなかった。どうせ又失敗だろう。そうとしか思ってなかった。
ところが、何気なくその監督の名前を見た瞬間、立ち読みの姿勢で凍り付いた。本当にその格好のまま、しばらく動けなかった。
オシイマモル…へっ?オシイマモルって…あのオシイ…
何ぃ、押井守だぁ?
又何で押井氏が原作付きを、いや又何でよりによって士郎正宗? 我に返るとすぐにその雑誌を購入し、家に帰ってからその短い記事を繰り返し読みふけった。
押井守の新作。しかも士郎正宗原作。もう『攻殻機動隊』の名前は私にとって期待度100%を超す作品に変わっていた。
それで出来は…
月並みだが、あの映像にはびびった。元々押井氏は実験的映像を自らの作品に挿入していたが、ここでその部分を一気に前面に押し出した感じ。本当に見事な映像だった。
アニメーションはハード的にかなりの制約があった(日本においては予算と人員もその中に入るだろう)。それが新生ディズニーによってコンピュータが導入されることで、今までの制約がどんどん取り払われていった。それが実用に足るものであることをここで見せ付けてくれた。こいつは凄いぞ。少なくともこの作品、単なる良質作品を越え、日本アニメ界におけるエポック・メイキングの役割を果たすに至っている。
一方、映画としてこの作品を考えると、押井守らしさと言うものが随分後退していることに気付く。押井守と言えば、膨大な量のウンチクと言葉の羅列。そしてそれに伴う哲学的な視点が特徴だが、その辺がかなり落ち着いているというか、抜けている感じがする。
自己の主張を作品そのものの持つメッセージ性に託し、オリジナルの本質を最重要視した結果だろう。原作の多くの部分をばっさりと切り、キャラクターの性格まで変えて、漫画の本当のメッセージを出してくれた。よくここまで自分を抑えられたものだとかなり感心する。
そう言う意味では極めてすっきりした内容となっているので、原作が難解で分かりづらいと言う人は是非この映画を観てから再度漫画を読んで欲しい。随分理解出来るはずだ。
でも、私なりに言わせてもらえれば、押井節が無くなってしまったのは悲しいな。あれが好きなんだけど。そう言う意味で-1点。
<付記> これを言うべきかどうか少々迷ったが、一応押井ファンにはばれてると思うので…
実は押井守の今取りかかってる次回大作というのは…
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