「誰も知らない」を考えた。

この母親に対し、嫌悪感を覚える種類の人と、そうでない人がいるようで、私は後者であった。決して否定できない母親。この作品の中では、悪も善もなく、少しずつ狂った歯車が悲劇を生んでいる。

母親から物理的に放置された子供たちの悲劇を描いているのだが、逆に考えてみるとどうなのだろうか。（ここでは母親しか存在しないため、母親としているが、親として考える）

物理的に保護され、学校にも行っているし、生活も安定していても、精神的に放置されている子供も沢山いるだろう。兄弟もなく、、いや、兄弟があっても兄弟同士も精神的に放置しあっていて、生命・生活に危険はなくとも、精神的に放置された状態になっている子供は、実は沢山いるのではないだろうか。

そんな子供がこの映画を観たら、この兄弟たちが凄く恵まれているように思うのかもしれない。食べ物がどんなにあっても、欲しい物を買ってくれても、一番欲しいものをくれない親、そして兄弟。そんな心を持った、子供が、きっとたくさんいるのではないかな。それこそ、誰も知らないけれど、本人の心だけが泣いているのではないか。もしかしたら、本人でさえ、気づいていないのかもしれない。自分が放置されていることも、心が空虚なことも、、物に満たされているようなつもりになって、気づかない。自分の心さえわからない、自分さえわからない、誰も知らない状態。

そんなことを思った。