[コメント] 父、帰る(2003/露)
なんとも評価に困る作品だ。片面は満点、片面は落第という感じかしら。
片面である「父と子の葛藤」の描写は本当に文句なしの素晴らしさです。肉親とはいえ今まで12年間も家にいなかった人が突然戻ったために一家の間に流れる間の悪さや、母の愛を独占してきたイワンの戸惑いと嫉妬を感じずにはいられない表情など、監督の繊細極まる演出力には何も文句をつけるところがありません。
しかし、作家が作品を語りすぎることはプラスにならないというのは理解できますが「大量に餌を撒く」という手段をとっておきながらの、この作品の語らなさ加減は非常に悪質だと思います。
歌人の俵万智さんの言葉で「歌が解説を欲しがるとしたら、それは表現の充実が足りないということだ。読者が解説を欲しがるとしたら、それは感性の充実が足りないということだ。」(「よつ葉のエッセイ」の「自作自注について」より)
全く彼女のいうとおりです。しかし、それは作品のすべてがさらけ出されての話です。短歌は31文字で完結する文学なのでそれも納得ですが、この作品は畑に巻いた種が全然刈り取られてないもの。
「語らないこと」と「語り足りないこと」を混同しないで欲しいです。
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