[コメント] 笑の大学(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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椿は前半までは庁舎の入り口で必ず怯んでいたが、後半の描写は庁舎入り口は飛ばして、いきなり取調室でのやり取りから始まる。ちょうどその頃、向坂は劇場の入り口前に立つものの、初日は後ずさりして観ずじまい。次の日ようやく観劇。
そして双方納得のいく(一度目の)作品の完成と椿の「権力との闘争」との思いの告白。それを受けての「笑いの要素を全て排除せよ」との向坂の難題。
最終日の(ニ度目の)作品の完成と椿の「戦場でお国の為に死ぬ(権力闘争の放棄)」との告白。それを受けての向坂の「死ぬならお肉の為に死ね(反権力的発言)」との切り替えし。
以上は「喜劇」と「体制・権力」という双方からみた2つの垣根の高さが変化し、取り払われていく演出ですね。双方の理解が深まる中、取調室が、取調べから台本の作成、そして舞台そのものの場になっていく様子が愉快だった。
最後に舞台「ジュリオとロミエット」が見られるのかと期待していたが、出征で終わる(笑えない)ラストは全くの予想外だった。ラストを除けば2人のやり取りの流れは自然でリズミカルなので、ゴツンと「壁」にぶつかったような印象を受ける。 エンドロールでこそ復員後の椿の演出による?と思われる舞台の一部を観られたが、コメディに敢えてこのような痛快でないラストを持ってきたのは、笑いを制限された戦時中の喜劇の境遇を最後にもう一度印象付けたかったのだろう。つまり、最後の壁は彼ら2人の壁ではなく、我々鑑賞者がぶつかるように意図された壁なのであろう。
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