[コメント] 冬冬の夏休み(1984/台湾)
冬冬の折り重なる目撃が大人の事情を垣間見た混乱の冗談である一方、妹の婷婷の寒子目撃は直截に心のなかに飛び込んでくる。この非対称性の巧みさ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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だから冬冬が爽やかに旅先を去るのに対して、婷婷は寒子を呼び続ける。呼びかけに応えない寒子は婷婷を忘れてしまったかのようだ。寒子のような不思議な人に私も幼少の折に出会ったような不確かな記憶が呼び覚まされてならない。
寒子が婷婷を線路から救う件の、冬冬目線で追いかける組立てが(基本通りだけど)抜群。病床から起き上がる寒子(楊麗音)は箆棒な美人と判明する。深淵な民話のようだ。小物の傘の柄も当分頭にこびりつきそうなインパクトがある。
冬冬の子供ギャグは清水・小津の正当な後継だろう。最後は痔で悩む頼りない甥など正にその世界。『憂鬱な楽園』のゴロツキ連中など、この子らがそのまま大きくなった具合で笑ってしまう(ビリヤードもしているし)。一度も雨が降らない、構図を絞らないばらっとした撮影が独自のいい味出している。
医師のお祖父さんを中心にした寒子へのパターナリズムな心配はいかにも儒教道徳でお国柄という気がする。お祖父さんの古軍がいい面構えで、この夫婦が旅立ちを中断される際の、線路は背後と思っていたら眼前を列車が横切るショットがいい。医院の建物は重要文化財級ではないのだろうか。あの廊下なら子供ならずとも靴下で滑ってみたくなる。
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